「記憶から消したい」と聞くと、嫌な記憶や人生の汚点など、ネガティブな体験が浮かんでくるかと思います。しかし、とあるゲームにより“感動した体験”でも起こることに気付かされました。

広大な世界に、記憶喪失の主人公が放り出され、食物や武器を確保し、駆け回り、敵と闘い、謎を解き記憶を呼び覚まし、使命に立ち向かうアクションアドベンチャーです。そこで“活きること”を通じて、生息する動植物や風景等、初めて見るすべてを堪能し、またストーリーやBGMの秀逸さ、謎の難易度や敵の攻略度、自由と束縛のバランスの良さ。このファーストインプレッションが人生に二度と訪れないと思うと、記憶をリセットして再度堪能したいと感じたプレイヤーが、私を含め続出したそうです。

　感動体験を「記憶から消したい」感覚は、疑似体験が可能な媒体で、突出した感動を得ることで起こる特別な感覚なのでしょうか。もし自分の人生2週目が可能だとしても、１週目の反省を糧に上手に生きようと思うはずですし。今後急速に変化する社会が、未知なる体験をつくり出すことでしょう。感覚を研ぎ澄まして“活きること”で、新たな感情の発見が起きる事に期待しています。

( プロダクト動態デザイン部　ユニットリーダー 猪瀬 聡 )