column 日々、思うこと separate

2023.12.04

コラム

道具の質

写真の工具はレザーカービング技法の革を叩いてレリーフを掘る刻印の一つです。どちらも狙う効果は同じですが、一つは1本5千円ほど、もう一つは1本千円ほど、5倍の値段差があります。スキルの低い頃はまず安い道具を購入し技術を磨き、段々スキルが上がると、もう一歩上の表現をしたく高い道具を購入します。確かに使ってみるとちょっとしたフォルムや曲率の違いで表現に差が出て、手や指のあたりも良い。素材も鉄からステンレスになり錆びにくい。このちょっとした道具への手間が道具の質に大きな差を生み、今では無意識にその道具を手に取ってしまいます。コストの掛かった高価な物ではなく、質の良さ。その質の部分は見えない価値かもしれませんが、作り手の使い手への気遣いの積み上げから生まれているのではないでしょうか。その積み上げこそがブランドであり高付加価値につながると考えます。

さてさて、みなさんはどちらが5千円の刻印だと思いましたか?

(CMFG動態デザイン部 執行役員 青木省吾)