高校生の頃、来る日も来る日も剣道に明け暮れていました。夜明けの朝練をこなし、7時間の授業後に夕練をして帰宅はいつも21時過ぎ。夕練が終わると自宅に向けてママチャリを10kmほど漕ぎ続けるのですが、途中に1kmほど続く上り坂の難所がありました。

ただでさえ疲弊した身体に追い打ちをかけ、ペダルを踏み抜いたその先に、綺麗な夜景と長い下り坂が現れます。輝く街に向かって風を浴びながら下っていくと、私の癒し時間がやってきます。

癒しには2つあって、1つはコンビニでポテチの一気喰い、もう1つがコンビニ横のバイク屋を見ることです。夜に丸刈りの高校生がポテチを貪りバイクを見ている（笑）。閉店したお店のショーウィンドウ越しに覗く、スリムな車体に極太リヤタイヤのSRXレーサー、きょとんとした四角目のDucatiと艶かしいフレーム。剣道中心の高校生には全く手の届かない別世界がそこにありました。

気づけば3年間ほぼ毎日見ていたオートバイ。そんな丸刈り時代から30年の時が経ち、私は当時のガラス越しに見たオートバイにライダーとして跨がり始めました。あの時と何も変わらず、私は好きです、オートバイ。

( CMFG動態デザイン部 シニアディレクター 早瀬健太郎 )