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2023.05.29

コラム

「出世色」

先日、美大生300名弱に好きな色のアンケートを行いました。最も人気があったのは青緑の色域。少し緑みを帯びた青系統の色嗜好は、近年の特徴です。

そうした青緑の一色であるターコイズブルー。宝石由来のこの色は、JIS慣用色269色の中にも含まれています。一方で、このターコイズブルーを「明るい緑みの青」と表す場合もあります。これはJIS系統色による色の表し方になります。「ターコイズブルーのTシャツを買ったよ」という表現と、「明るい緑みの青のTシャツを買ったよ」という表現では、随分印象が異なりますよね。慣用色ではその色を直感的に連想しやすく、系統色では整理分類しやすいメリットがあります。

さて、色彩の仕事を日々行なう上でも、出世魚のように色名が変化する場合があります。出世魚ならぬ出世色は、デザインの提案段階から、開発段階、そして世に出る段階でそれぞれ色名を変えています。提案当初は心惹かれるネーミングでも、世に出る頃には整理分類しやすい味気ない名前になってしまうケースや、またその逆の場合もあります。出世する前の色名をこっそり知っているのは、デザイナーの隠れた楽しみの一つです。

( CMFG動態デザイン部 / 経営企画部 井上弘介 )