column 日々、思うこと separate

2022.11.07

コラム

遠回り

サーフィンをやりたい。大学生のときに観た『稲村ジェーン』という映画からずーっと。私の世代ではありがちな理由です。少しズレていたのは、興味がサーフィンそのものではなかったこと。映画は「なんか来ねえかなぁ」と全編が波待ちウダウダ状態(笑)。ユルく、けだるく、無意味(的)ですが、主人公とその仲間たちの過ごしかた、流れる空気が当時の私には眩しかった。気づけばその後からこれまで、鎌倉の物件探しが続いています。 

あれから30年は経ったかも? 数年前に私は鎌倉に越してもなお、懲りずに鎌倉物件チェックを続け、そして遂には波乗りを始めようと、誰も居ない穏やかな海に通いはじめました。肩の怪我でサーフィンが出来るようにはならないのを承知で、毎週末は海に入っています。 

その同じ海で、御年70近くの紳士と出会いました。聞けば、大病を患いながら退院した今日この日にウェットスーツを買い、大昔のボードを発掘し、入水式に来たとのこと。私もニューボードを持ち込んだ日で、「入水式仲間だね」と握手を交わしました。思い出の色褪せたボードに描かれたロゴは「この海から見たこの夕日なんだ」と教えてくれました。 

やり直すのも、始めるのも、いつでも良い。そう思いました。 

( CMFG動態デザイン部シニアディレクター 早瀬 健太郎 )