column 日々、思うこと separate

2022.08.01

コラム

昔は良かったという言葉から

私は、どちらかというと新しい時代のものが好きだ。

色々な人たちが悩み抜いて出てきた知恵の結晶が、新しいものには詰まっており、利便性が高く感じるためである。一方で、古き良きものの中にも好きなものはたくさんある。私は国際結婚をしているため、文化や言葉の溝を埋めることができる今の環境がとても心地の良いものだと思っている。そのため「昔は良かった」という言葉は、あまり共感できない言葉だと思っていた。

そんな私が「昔は良かったなぁ」と思わず感じてしまった出来事があった。それは1980年代を舞台にした海外ドラマを観ていた時である。携帯電話は当然のように存在しておらず、遠い地で暮らす友人との連絡手段は固定電話か手紙。暫くぶりに会った時の感動はとても大きなものとして表現されており、「感動の再会があった昔は良かったなぁ」と共感した。IoTがない時代の苦労からくる達成感に共感できると思ったのだ。コロナ禍によるオンラインでのコミュニケーション技術の発展は、さらにこの共感を高めているように感じる。そして、「昔は良かった」という言葉の裏には、私の好きな新しい時代のものが多く生み出されていることを再認識した。

もし10年20年後に、コロナ禍を『昔は良かった』と言えるものが生まれて来るのだと考えると、共感できないと思っていた言葉が未来を想起させるワクワク感に変わった。

( CMFG動態デザイン部 ユニットリーダー 片平憲男 )