column 日々、思うこと separate

2022.03.29

コラム

アートとデザインについて

宗教>王族>資本家>一般大衆、さてこれは何を表しているでしょうか?

あくまで私の考えですが、これは「アートのパトロン変遷」です。アートには常にスポンサーがおり、時代や価値観変遷と共に代替わりしてきました。アートに要求されるものもパトロンが代われば変わる、これが表現の進化を支えているのでしょう。

長さでいうと宗教がパトロンだった時代が圧倒的に長く、アートは教義を讃えたり伝えたりする位置付けでした。やがて宗教が力を失っていくにつれアートの役割も変わり、「批判力」が重要になっていきます。神ではなく人が主体となった事で「人類の進歩史観」が生まれ、進歩のために現状を批判する力が尊ばれるようになりました。常識を疑い破壊するようなアートがアートたり得るのはここに由縁があるのではないかと思います。この時代にアートは現状を批判し次の時代を見出す、デザインはそれを社会実装する、という役割分担ができていきます。

ところがデザインの意味が広がっている昨今、スペキュラティブデザイン等「批判力」もその範疇に数えられる様になっています。デザイナーはアーティストじゃない、という論調はよく耳にしますが、だからと言ってアートのことを考えなくて良い、という訳ではないのです。

( CMFG動態デザイン部 シニアディレクター 渡邊拓二 )