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モーターサイクルは、人が跨がって操縦するとてもユニークなモビリティーです。
そのデザインをする際、「ライダーとの一体感」や「人が跨がって完成する形」を目指すべしと語られますが、実はそれ以上に、「新たな操縦感を生み出すために、ライダーをどのように跨らせるか?」が、新しいデザインを生む要素となっていること、ご存じですか?
例えば、レースマシーン。各メーカー、各ライダーごとに乗り方に対してのセオリーが違います。歴史を振り返ってみても、後輪の前に乗る時代から、フロントタイヤに近く、重心の高いところに乗る時代へと変化していますよね。その都度、バイクのデザイン(ここで言うデザインは形だけでなくて、レイアウトやパッケージも含んでます。)は変化し、好成績を残したものが進化として認識されていきます。
この変化、実はデザイン(ここでは形)にも大きく影響していて、そこを意図して表現できるかどうかで、デザインのアウトプットが変わってくるとGKの先輩方から教わってきました。
添付のスケッチを見て、一緒にクリエーションしましょう。
1:ライダーを乗せる位置を決める。
2:ライダーの姿勢を決める。
3:ライダーの動きを想像する。
4:動きを阻害せず、最もコンパクトで機能的な形態を想像する。
実はこれを突き詰めると、赤い線で描いたシルエットラインが決まり、黄色い塗りで表現した面とボリュームが決まります。
レーシングバイクのタンク形状は、すべて人の形に影響を受けています。カウルに入り込む為にはヘルメットの顎をできる限り低くしないといけないですし、腕の内側は操縦を妨げないようにコンパクトにするけれど、時に腕で車体をグリップするような操作が求められます。また腹部の形状は、伏せ姿勢で干渉しないようにしながら、レース中にガス欠しないようにしっかりガソリン容量を確保するスペースです。シートは体を左右に移動させながら、お尻でリヤタイヤの挙動を感じるために広い着座部が必要。足の内側は体の動きを配慮し、かつ直線全伏せでは足がカウルに入り込まなければなりません。
どうですか?ほとんどすべてのデザインが人で決まってくるということ、ご理解頂けたでしょうか?
この思考を極限まで突き詰めると、究極のエルゴノミクス表現が見え、そそる要素が生まれてくる。だからレースマシンはいつも魅力的なんだというのが、私の思うところです。
これ以上解説すると長くなりすぎるので、絵を見て想像を膨らませて欲しいですが、風の流れや人の動きで形態が決まっていくモーターサイクルのデザインでは、グラフィカルなデザイン以上に重要な視点なんですね。
この視点、GKではあらゆるジャンルのデザインにも反映させています。その答えを導き出すために、クライアントの皆様と深くモーターサイクルを語り、企画者や技術者、そして実験ライダーの方々が何を狙っているかを探りながら形に落としていくこのプロセスが最重要なのです。
また、機会があれば、その他ジャンルについても解説させて頂きます。
モーターサイクルデザイナーが、真剣にライダーを描く。面白いアプローチですよね。
( プロダクト動態デザイン部 執行役員 清水芳朗 )