column 日々、思うこと separate

2021.06.28

コラム

わらアートってご存知ですか

 

生まれ育った田舎で「わらアート」作りに携わっています。地元のおじいさん達が十数年継続している藁で作ったマンモス作り。毎年葺き替える必要があるため、少しポースを変えたり、子どもマンモスを作ったりと楽しんでいたら、いつの間にか観光スポットになってしまったという活動です。数年前から、この活動に加えていただきました。子どもの頃一緒に遊んでくれた方もいて、「こうすけくん随分おっちゃんなったなぁ」とお褒めの言葉をいただきながら、地元の田んぼで藁まみれになれるのはとても幸せな時間です。マンモスの表情や藁の積み方にこだわるおじいさん達を間近で見るにつれ、地元に根ざしたアートもいいもんだと感じます。

この活動に携わることになったのは、あるアートイベントで、武蔵美の学生さん達が作成した「わらアート」がきっかけです。地元でも作品を作って展示できないかという運びになったそうで、数週に渡って先生や学生の皆さんが地域の人達と一緒に作成して完成。その後、藁の葺き替えを兼ねながら脈々と地元で続いているという経緯です。一連の活動の先生にあたる方が私の学生時代の恩師だったこともあり、ご縁が繋がり今に至っている次第です。

NPO法人「わらアートJAPAN」という団体があります。その活動は全国各地に広がるだけでなく、タイやオーストラリアといった海外にまで展開されています。全国の有志が集まった「わらアートサミット」も新潟県の岩倉温泉と、岐阜県の美濃加茂市で過去2回開催され、藁の編み方や積み方など、有意義な情報交換をさせていただきました。また、材料となる藁がある→米づくりが盛んな場所→日本酒が美味しい→全国各地の酒を持ち寄って飲めるという夢のような状況。集まっているみなさんもバイタリティがあって魅力的な方ばかりです。「アート」というと特別なもののように思われがちですが、人々の生活に密着した創作活動は、特別な言葉が必要なくなるほど見る人の心の琴線に触れます。一品もののわらアートと、日頃携わっている量産前提のデザインは性格こそ違えど、目指す方向は同じなのかもしれません。コロナ禍が過ぎておじいさん達と一緒にマンモスが作れる日を楽しみにするばかりです。

( CMFG動態デザイン部 / 経営企画部 井上弘介 )