column 日々、思うこと separate

2021.01.15

コラム

重箱の美学

 みなさま、あけましておめでとうございます。

 今年の正月は実家に帰らなかったため、自分でおせち料理を重箱に詰める体験をしました。それで気づいたことですが、おせちのお重(重箱)というのは、可搬式のパーティ料理であり、ハレ(儀礼的)×料理×モバイル(可搬性)という組み合わせはすごいことかもしれない、と。

 まず料理におけるフォーマルとモバイルの組み合わせが、異質な感じがします。たとえば、運べる料理といえば「お弁当」がありますが、カジュアルでどこでも気軽に持っていける料理です。その一方「おせちのお重」はフォーマルサービスです。

 お重は、品質のために気温の低いところに準備されていて、いつでも必要なときに料理を提供します。そして、必要分だけ食べた後、減った分は補充して次のサービスに備えます。お客様に対してのサービスと、提供する側の利便、そして食材が無駄にならない。三方よしのサービスは、そのままサービスの場と準備する場を、自在に移動できる可搬性があるからこそ実現できています。

 通常、移動式のサービスは固定されたものよりも質が落ちることが多いですが、「重箱」は高品位な箱のつくりと、ふたを開けて順番に展開するときの「ドラマチックな料理の現れ方」で、日常とは違う「高品質」をも提供しています。

 コロナ以降、人が動くよりもサービスが動く時代に変化しています。だからこそ「おせちのお重」のように、動くことによって生まれる新しい視点は、価値があるのではないでしょうか。このような視点で、いろいろなサービスをモバイル化したらどんな展開になるか。面白くなりそうだ、と元旦の日に考えました。

( プロダクト動態デザイン部 デザイン・ディレクター 三富 貴峰 )