column 日々、思うこと separate

2021.01.08

コラム

道の音から

 コロナ禍による生活の変化の一つとして、自転車に乗る機会が増えました。休日のリフレッシュだけではなく、時には通勤で使うことも。在宅勤務が増え、毎朝就業前に気持ちの切り替えや頭の整理を兼ねて散歩がてら近場を走ったりなど。近所にある小川の側道が定番ルートで、天気の良い日の朝は心地良く、走っていると色々な動物達に出会います。オナガセキレイ、ノガモ、シロサギ、アオサギ、たまにカワセミ。新鮮だったのは川沿いに乗馬練習場があり、朝靄の中を走る馬の姿や、犬と思ったら狸だったことも。さえずりや鳴き声、朝走りながら様々な音が聞こえてきます。

 そんな折のある日、動画にてEVモーターサイクルで大陸を旅する映像を目にし、アルプスの中を爽快に走る様、風の音と歓びの声を聞く内に、記憶の中のある情景が思い浮かんできました。モーターサイクルに乗りたての頃、ただ走るのが嬉しく出掛けていた山々での一場面、緩やかな坂でエンジンを切り下ってみた途端、訪れた静寂、木々の靡き、体に触れる風、車輪だけが回る音に包まれた感覚、風だけで飛行するグライダーはこんな感じなのかもしれないなと思った記憶。同時に、エンジンをかけて走り出した時の鼓動感と心地よいリズム感、思わずにんまりとした時間。

 CASE,Maas,SDGsのニュースは日々何かしら目にします。移動具を取り巻く環境や存在が今後大なり小なり変化していくのは避けられず、モノだけではなく様々な事が複雑に絡みモヤモヤした思いもありますが、10年先の朝、同じ川沿いを走った時の心地良さや、山を訪れ走る中で得られる悦びや情景は、大きくは変わらないのではとも思います。変化に適応しながらも新たな発見や機会は生まれてくる。我慢ではなく愉しみたい、充実感のある経験をしたい、そんな人の素直な気持ちに答え、感情を呼び起こす道具をつくり続けられる存在でありたいと想いを巡らせながら、今日の朝も走ってきました。

(CMFG動態デザイン部  NDユニット  ユニットリーダー 木下 省吾)