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今回のGWで京都に帰省した際に、茶菓懐石なるものを体験してきた。和菓子職人の創り出す伝統と革新が融合した茶菓子を、厳選茶葉の日本酒やカクテルと愉しむ五種類のペアリングコースだ。七人の客人がコの字に収まる部屋に入ると、各自の席には匙や菓子切りと屏風織のお品書きが美しく並んでいる。まもなくして店主が中央に登場し穏やかな声で茶会の説明を始める。この一人の店主がその都度五種の茶を淹れてくれるシステムだった。
全てを体験した後に私がまず思ったのは「ああ…、いい体験をした」ということだった。食を愉しみに行ったので美味しかったのも間違い無いのだが、それよりも体験そのものの価値の方が上位だったのである。そこにはいくつもの要因がある。品書きに添えられた菓子のインスピレーションを記した短い「詩」、茶を淹れる時に道具を扱う店主の美しい「所作」、雫の一滴一滴を大切にする「作法」、それらによって作られる穏やかかつ張り詰めた「空気」。全てが複合的に一つの世界を創っているんだなと実感できたのだ。
モノだけでもコトだけでも不十分。セカイそのものを創る工夫、を改めて感じた体験となった。
( CMFG動態デザイン部デザインディレクター 永井智 )