column 日々、思うこと separate

2023.01.02

コラム

永続するデザイン

1000年を超えるデザインとは。

先日、三重の伊勢神宮を訪問した。あまりにも歴史深く有名な神社であるが、関東からの伊勢は遠く、50を超えるこの歳になるまで一度も訪れたことはなかった。他の神社とは違う趣を感じながら参拝を終え社殿を出ると、その隣の広大な「更地」に気付く。「これはなんだ?なにか改装中か?」と思いながら神宮内を散歩していると他の社殿も同じように隣に同じサイズの「更地」がある。実は神宮の社殿は20年に一回お隣に同じ社殿を建て替えて神様が引っ越しをするとのこと。自分が見た社殿は十数年前の建物か、それを1000年以上繰返してきたのかと驚いた。この行為は一見無駄とも思えるが、よくよく考えるとこのシステムを用いることで職人の仕事は永続的に続き、その周辺の商業や工業含め街の経済が活性化する。権威の象徴として1回の豪華絢爛な「モノ」をデザインするのではなく、社会の「循環システム」をデザインするという発想が1000年以上も前の日本にあり、永続を実現していたことに感銘を受けた。

(CMFG動態デザイン部 執行役員 青木 省吾)