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モーターサイクルデザインの肝:その4

モーターサイクルのデザインは様々なパーツが集合して成立しています。

デザインの要素として着目されるボディー(タンク、カバー類、シート等)以外にも、エンジンやフレーム、ハンドルやライト、タイヤやホイール、フロントフォークやスイングアームといったパーツの関係性もデザインする際の重要要素です。今回、その関係性の中でも私が特に気にかけてデザインしている点をご紹介します。

それは、部品と部品との対比です。ちょっとわかりにくいかもしれませんので、まずは絵をご覧ください。

例えば1。ヘッドライトの大きさと位置でシルエットも当然変わりますが、周りのパーツの見え方も変わってきます。ライトが小さいとフロントフォークが太く見えたり、タンクが大きく見える。ライトが大きいとフロントフェイスの存在感が増す。

2の例も1に近いですが、普通サイドビューのスケッチでバランスとると左側を選びたくなります。ですが、バイクをハンドルロックで駐車している「一番目にする状況」で見ると、右のライト高めにしておいた方がタンク顔回りのおさまりもいいですし、タンクも低く見えます。

3はタンク後部の幅がデザインに与える影響です。タンクをリヤタイヤよりも細く見えるようにライン調整すると、リヤタイヤの圧倒的な存在感が増します。また美しくくびれたボディーラインも表現できます。逆にタンクを幅広く見せると、力強い男性的なボディーデザインが表現できます。

4はタンクとエンジンの見え方についてです。タンクをエンジンより少し細くし、ライダー目線でもエンジンが見えるようにすると、車体からはみ出す巨大なエンジンのマシンにまたがっている感覚を表現できます。ちょっとした違いですが、イメージは全く異なります。

最後に5。これはタンクを細くデザインすることで空力を意識したもろレーザーシルエットになります。しかし、これでは当然ガソリン容量が取れない。そこを逆手にとるとタンクの存在感と抑揚間のあるエルゴノミクスをアイキャッチにしたスポーツマシンとなるわけです。

このように、パーツとパーツの関連性を分析しながらデザインをすることで様々な見え方が生まれ、そのさじ加減で「デザイン画で描いた形」にも多種多様な表現変化が起こります。

GKダイナミックスでは、昔からそして今日でも、絵を描いたデザイナーがクレイモデルやデータモデリングを可能な限り実施するポリシーでデザインを行っています。その理由はまさにここにあります。この多様な解釈ができてしまうデザイン画を、可能な限り初志貫徹し、クリエーションを磨き上げるプロセスを維持したいと考えているためです。そして、絵を描く際に、単なるデザインのバランス取りをするだけではなく、「相対的にどう人はマシンを見ているか?」「実際にモノが見られる状況はどういった状態か?」といった想像力、観察力、分析力でデザインを行っています。GKとしての「デザインの引き出し」を日々のプロジェクトを通し開拓し、ストックと共有を行いながら次なるデザインへと展開しています。

この考え方、カスタムの世界でも通用しますので、トライしてみてくださいね。

( プロダクト動態デザイン部 執行役員 清水芳朗 )