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2021.11.01

コラム

道具の形 – コンビネーションレンチ

機能から生まれた道具に外観の違いは無いと思われがちですが、実際はデザイナー(設計者)や会社の思想がにじみ出ています。

車やモーターサイクルの整備では基本的ハンドツールの一つ「コンビネーションレンチ」。

を眺めながら形を読み解いてみましょう。

一枚目の写真はアメリカンブランド三つ。

Snap-onは傷に強いクロームメッキがアメリカンな永遠性をイメージさせますね。同じアメリカのProto Toolsは梨地で品の良いロゴ。歴史がありコンビネーションレンチの生みの親でもある自身に満ちています。反対にMac Toolsは角ばったスパナ部などレースのイメージがあります。握るところの断面もProto ToolsはSnap-onより丸くMac Toolsは四角い。同じアメリカでもかなり違いがありますね。

二枚目は日本とドイツ。

KTC(京都機械工具)はスパナの先端が少しシャープで狭いところに入り込む。ドイツのStahlwilleは軽量で握りやすいI断面形状や応力集中しにくく曲げたスパナ部の首、ボックス側の微妙なオフセットなど理屈が満載でいかにもドイツ的。もう一つのドイツブランドHazetは質実剛健、高剛性なイメージ。下の新しいギラギラしたSnap-onと比べるとドイツ、日本のツールの地味さが分かりますね。

最後の三枚目。技術とアイデアの台湾。

コンビネーションレンチの革命は90年代に台湾のKabo Toolsから始まりました。ボックス部がギアレスのラチェットレンチになっていて一方向へのみ回転します。その後ギア式のLea Way (GearWrench)が大流行していまや定番になってます。奥にあるのは昔からあった似たコンセプトの「板ラチェット」ですが整備関係ではマイナーでした。新技術がKaboのスタイリッシュなデザインを作り出しトレンドを生み出したと言えるでしょう。

デザインの革命はコンセプトと技術が合致した時に起こるという好例です。

 

( プロダクト動態デザイン部 デザインディレクター 麥倉 毅美 )