column 日々、思うこと separate

2021.07.02

コラム

愛でたいカタチ

“美しいカタチを観ると触りたい衝動に駆られる”

人間は80%以上を視覚によって情報を判断しているといわれているが、眺めているだけではどうしても心を満たしてくれない感情を抱いたことはありませんか?

人間の手のひらや指先は数ミクロンの段差や形の変化を感知できます。例えば細い髪と太い髪をつまんでその差を指先で認識できるはずです。それは指紋がセンサーとなり形状や表面処理の違いを感知しています。

 

私たちが携わっているモノづくりの現場では、視覚と共にそういう触覚なども研ぎ澄まし、何度も手のひらや指の腹でさすりながら形状を認識し、造りたい表情を想像しながら気持ちを入れて作成します。最初は単なるボリュームだけの立体が、意志を持ちながら作成することで心が入った“カタチ”に変化していきます。

そうやって造られたカタチを観ると触ってくれと懇願しています。触ることでカタチが感情に訴えかけてきて、それは視覚だけでは補えない何かを語ってくれます。そうした心が入ったカタチは一方的に自分のそばに置いておきたくなり、事あるごとに触ってしまいます。

 

モノの美しさや可愛らしさに感動し、それを味わい慈しみ大切にする行為=それが愛(め)でる行為です。愛でたいカタチは造り手の意識によっても産まれてくると考えます。

だからライダーは信号待ちで自分のバイクのタンクをつい撫でてしまい、愛車を磨き上げてにんまりしてしまうのかもしれないですね。

 

 

( プロダクト動態デザイン部 ユニットリーダー 猪瀬 聡 )