column 日々、思うこと separate

2025.10.06

コラム

道具と人の微笑ましい関係

私は中古品を購入して使用すること対して、抵抗がないと自覚している。特に道具の類に関してはまっさらな新品より、むしろ好んで中古品を選んでいるふしがある。なぜなら『先人の痕跡』という新品にはない面白さがあるからだ。

写真はアウトドア用のバーナーだが、私が入手したときにはすでに前オーナーの手により、注意書きがペンを使って書き込まれていた。落書きといってしまえばそれまでだが、おそらく前オーナーは道具として使い込む過程で、より使いやすくしたいと自らカスタマイズに踏み切ったと想像される。『道具との関係をアップデートしたい』という想いが刻まれている気がするのだ。書き込んでからはきっと、道具との関係が改善したと感じ満足したことだろう。そして愛着を持ったかもしれない。そんな想像をするのが面白いのだ。

ともすれば製品としては不親切で不完全だったかもしれない(実際コストダウンのために、様々なところが割り切った設計になっている)。皮肉なことだが、それゆえに人が補完する隙が生まれ、密接な関係性を生むことになったのだ。

いまも先人の痕跡を見つけるたび、道具と人の関係性について思いを馳せる。

(CMFG動態デザイン部  ユニットリーダー 菊地 創)