column 日々、思うこと separate

2025.03.17

コラム

モノとヒトとココロ

1977年に地球を飛立ち、一番遠い人工物として旅を続けるボイジャー1号。昨年10月に地球と交信するための通信機が故障。そこでボイジャー1号は自らの考えで、40年以上使用していなかった微弱のサブ機に切替え不具合を送信し、地球側がその電波に気付くのを待った。一方、地球のエンジニアからは、当時ヒーターの使用指示を送信したが応答がなく、通信機の故障を想像していた。数日後エンジニアは、サブ機への変換時に発生する僅かな電波を拾ったことで故障したことを理解し、その後無事にサブ機で繋がることができた。

ボイジャー1号との距離は249億km、受信に23時間、会話成立に46時間かかる。その状況で忘れかけていたサブ機が動いた奇跡と、かすかな声を聞き取ったエンジニア。ぽつんと暗く寒い宇宙で、地球からの声を聞いたボイジャー1号と、ようやくヒーター使用指示ができたエンジニアは、どちらもこの上なく安堵しただろう。

もうその姿を見ることがないボイジャー1号と、細い糸でどうにか繋がった地球人を想像したら、モノとヒトとの純粋な関係にココロがほっこりさせられた。

故障の原因究明を行い、これからも地球と共に繋がって旅を続けていく。

(動態コンテクストデザイン部 デザインディレクター 猪瀬 聡)