column 日々、思うこと separate

2024.11.18

コラム

初代の美

 先日スバルの歴史的な名車を解説付きでじっくり見させていただく機会がありました。スバルの最初の車と知られるスバル360(通称デメキン)の車内に入ると、シンプルで洗練されたデザインに驚きました。徹底的に無駄がそぎ落とされ、シートは波型プレスされたアルミのバックパネルという徹底ぶり。聞けば、限られた排気量で大人4人が移動できる車とするために徹底的に小型軽量に仕上げる必要があり、フロントガラスは運転者のすぐ前に、前席の人の足は前輪の車軸の位置に置くために、サスペンションも特殊な構造を採用しているとの事でした。結果として人車一体感のある、飛行機のコクピットにいる様な研ぎ澄まされた空間美がそこにはあります。

 スバル1000の初代も同様です。人が快適に移動できる空間を作るために技術が使われ、インテリアエクステリア共に、ドイツ車でもアメ車でも無い、日本らしいの美しさが感じられました。何かを表現しようとしているのではなく、中島飛行機の思想を技術で磨き込んで結晶となったかのような美しさです。

 ただ、残念ながらどのモデルも年月を経てマイナーチェンジを経る事で様々なものが付加され、そこの当時の日常を感じるようになります。それはそれで楽しくはあるのですが、時代を超えて輝き続けるものはやはり突き詰めた初代モデルなのだと再認識しました。

(執行役員 太田 裕之)