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共働き夫婦の私たちは、最寄り駅からローカル電車に乗って、JR線が乗り入れる大きな駅に向かいます。
この型式ってクーラー効き過ぎじゃない?
あそこにあんな家あった?
と、どうでもよい会話をしていると、電車の窓の外側に一匹のバッタが必死にしがみついていることに気がつきました。アタマを進行方向に向かせ、風の抵抗を最小限にして耐えています。カラダより長い触覚が後ろに引っ張られ、いまにも千切れそうです。
なんか楽しんでるように見えない?
いや、怖いでしょ
怖いって感じる脳ってあるんかな?
ん〜… いま何を考えてるんだろう
なんだこの景色は!とか、スピードやば!とか
あれは苦しそうだよ、ほら脚が一本ないし
ふたりの会話はどんどん無意味さを増し、バッタには何が見えて、何を感じているのか、推察ゲームがやみません。
「 あっ!」
終点まであと一駅のところで、剥がれ落ちるようにバッタは飛んでいきました。
何かの判断か、単にすべったのか、私たちにはわかりません。バッタにはバッタの世界があって私たち人間世界とは分かり合えない。世界は一つではなく無数にあることに気が付きます。
世界と宇宙、いったいどちらが広いのでしょうね 。
(動態コンテクストデザイン部 シニアディレクター 早瀬 健太郎)