column 日々、思うこと separate

2019.11.19

コラム

内と外

日頃私たちがモーターサイクルやプロダクトのデザインを行う際、「機能をカタチに表して、魅力的に見せる」ことを心掛け、考えている。クライアントとの議論でアイディアやスケッチ、立体造形を決めていく際にもこの考え方は判断する軸のひとつとなっている。特にモーターサイクルはエンジンやフレーム、構造部品など、メカニズムが剥き出しになっている固有のプロダクトとしてその良さをダイレクトに伝えたい、そんな思いがデザイナーだけでなく、設計者や企画者にも浸透している。
先日、某自動車メーカーのデザイナーの方々と会話する機会があり、その際にエクステリアのデザインは「汗をかかずにさらっとやっているように見せたい。構造的なことは包み込んで、苦労を見せずに造形を完成さている。」とのコメントがあり、一見正反対のアプローチをしているかと思ったが、実はそうではなかった。「構造的な苦労は表面に見せないが、そのクルマがどんな風に走るのか、走りそのもののポテンシャルを形にするのも大切。乗ってみて形と乗り味の違和感はあってはならない。そのためのプロポーション、スタンス、光や造形の抑揚コントロールには妥協しない。デザイナーはそのモデルの特性を良く理解していなければ魅力的なデザインになっていかない。」との話であった。
対象は違えども美しい形を生み出そうとする姿勢や気概に共感と刺激を覚えると共に、弊社の御大に言われた言葉を思い出す。
「“張り”は内面の力、その緊張の表れである。骨と筋肉、皮膚は一体であり、内にあるものを理解せずに外だけで考えてはいけないよ。」
内部の力や機能にのありのままに基づいてカタチにしていくモノもあれば、内包するものを踏まえた上で魅力的にカタチにするモノもある。対象のプロダクトの性格や、使い手に訴求する感情次第でデザインアウトプットは一様ではないけども、内なるものを理解し考え、その上でカタチに拘る。デザインのプロセスとしては一見あたり前なのかもしれないが、動態デザインの独自性を生み出す一面がそこにあると改めて思う機会であった。
 
(プロダクト動態デザイン部 ユニットリーダー S・K)