column 日々、思うこと separate

2020.02.17

コラム

ソーシャル アクセプタンス

最近、バイクを含め世の中レトロブームですね。我々の業界ではヘリテージMC(モーターサイクル)と呼び、ヤマハ発動機さんのSRやXSRシリーズがそれにあたります。デザイン的には落ち着きがあり、大人も満足できる普遍性が魅力。ヤマハ発動機とGKが得意とする世界観であります。
 
そんなヘリテージMCの開発に携わり、今のバイクカルチャーの大きな変化を体感しながらGKもデザイン開発を担当させて頂きました。XSR900はGK Dynamics担当、そしてXSR700とXJR1300Cのデザイン開発はオランダにあるGK Design Europeが担当でして、私も駐在員としてオランダに6年間滞在し、現地開発メンバーとともに調査、デザインを行ってきました。
 
その活動において特に印象的だったのがこの「Social Acceptance」。デザインから感じる「古き良き普遍性」以上の強い魅力としてこのブームに沈在している要因でした。日本語で簡単に説明すると「社会に受け入れられるということ」。もう少し具体的に言うと、「自分ではなく、周りの人々から『いい趣味をお持ちですね!」と笑顔で接してもらえる存在であるということ」だということです。
 
操縦する楽しみ、スピードへのあこがれ、マシンへの愛情といったように、モーターサイクルはついついライダーの自己陶酔の世界が主役となりすぎる場合があります。危険、騒音、暴走、反社会的といった悪い印象で外から見られている場合もあるということを少し蔑ろにしないとモーターサイクルの存在感が保てなかったというのが実際のところでしょう。この状況は熟成したモーターサイクルカルチャーを持つ欧米でも同じでした。
 
そんなMC文化の中、DEUSをはじめとしたアパレル業界がMCを取り入れファッションとしての意味合いが増し、またWheel & WavesのようなヘリテージMCを取り込んだイベントが各所で開催され、人とのつながりと場のムードを楽しむ社交性に注目が集まりました。これらがヘリテージMCカルチャーとして急激に開花し、現在も継続されています。MCに乗らない人間から見ても素直に魅力的なコンテンツと、同時に上質なライダーたちの立ち振る舞いにより、ソーシャルアクセプタンスが向上。その動きを一早く取り入れたメーカーがブランドを築けている時代と感じます。
 
一昨年前あたりから、日本でも同じムーブマンスが各所で起こっています。そして、これら活動の企画者はファッション業界やプライベーターの若いライダーたちであるというのもユニークです。トレンドに敏感で、SNSをスマートに使いこなす彼らの動き方はとても刺激的で、MCを絡めながら集い楽しむことを求めている新世代ライダーがMCの社会性を高めてくれそうな気配を感じます。
 
最後に、先日あった少し面白いお話。
現在私は東京都内のマンションに住んでいて、大型バイクを2台保有しています。天気のいい週末はバイク置き場で簡単なメンテ等をしたいなと思うのですが、隣人の方々がどのように思われるか心配でして、出来る限り短時間で作業するようにしています。ですが先日、どうしても少し整備しなくちゃいけないことがあって、息子(4歳)との遊び相手とメンテの両立として、彼と一緒にバイクを整備することにしました。
 
すると、普段では全く起こらないことが、、、
 
なんと、同じマンションの住人数名から声をかけられました。
「大きいバイクね、お父さんすごいね。」
「お父さんのお手伝い?頑張ってね。」
「これなんて言うバイクですか?いいですね、息子さんと。」
 
息子の効果絶大と思いながらも、これこそソーシャルアクセプタンスを作り出す次の手か!?!?このあたりを分析しプロモーションに展開すれば芽があるんじゃない!?!?と感じだ次第です。

(プロダクト動態デザイン部 ジェネラルマネージャー 清水 芳朗)