column 日々、思うこと separate

2025.06.02

コラム

憧れの一台

モーターサイクルデザイナーを志す中で、誰しも憧れの一台に出会うものだ。
私にとってそれは、DUCATIのM900である。

ミゲール・ガルッツィが手がけたこのモデルは、「そぎ落としの美学」によるシンプルで独特な佇まいが印象的だった。だがM900の魅力は見た目だけではない。エンジン、タンク、フレーム、シートといった構成要素が、スポーツバイクに求められる“マスの集中”という観点から、プロポーションが極めて美しくまとめられており、モーターサイクルとしての本質を突いた存在だった。
入社して間もないころに手に入れ一度は手放したが、その後20年以上を経て再び巡り合う機会に恵まれた。今は同業者としての視点で見るようになったが、それでもなお、このバイクの持つ本質的な魅力は色褪せないと感じている。

(プロダクト動態デザイン部 マスターデザイナー 竹﨑 彰一)