column 日々、思うこと separate

2025.01.10

GK Base Salon

GK Base Salon Vol.13 2025/01

弊社と親交のある方をお招きし、創発スペースでお話しを伺うGK Base Salon。今回は、新進気鋭のデニムブランドであるトムワークスの島尻さんと小松さんにお越しいただきました。

お二人とは、ヤマハ発動機とトムワークスとのコラボレーションプロジェクトにおいて、デザイン全体の監修と企画業務を弊社で担当させていただいたのがきっかけです。プロジェクトで協働した弊社永井さん、松田さんとの対談の模様をお伝えします。

<松田>
本日は島尻さんと小松さんにお越しいただきました。まず、今回のプロモーションビデオをご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=q6pb20IyqtM (←動画にジャンプします)

トムワークスさんは2020年創業で、少人数で活動されているにも関わらず、魅力のあるプロダクトを作っているなと感じていました。あらためて、どのようなきっかけでブランドを作ったのでしょうか。

<島尻>
創業した2020年はちょうどコロナ禍でした。その当時、私が音楽関係の仕事を、小松は舞台衣装を作る仕事を行なっていたのですが、コロナ禍になってから音楽関係や劇場の仕事が急激に少なくなりました。まとまった時間があったので「じゃあ、ブランド始めようか」といった流れでスタートしました(笑)。元々二人とも文化服装学院という服飾の学校を卒業していることもあり、そうした経緯で始めることになりました。

——どういったブランドを目指そうかといったことは決まっていたのでしょうか。

<島尻>
元々ヴィンテージの服が好きだったのですが、年々価格が上がっていて購入しにくい状況でした。同じように考えている人たちもいるだろうと、ヴィンテージ路線で作ろうと考えました。

——島尻さんから、ヴィンテージのエッセンスはあるけど、今着てもおかしくないようなモダンな要素も取り入れているということを以前伺いました。ただのヴィンテージだけではないこだわりはありますか。

<島尻>
ヴィンテージをコンセプトに作っていたのですが、それだけだと差別化がつきにくいこともあって、小松の考えも合わせて作るようになりました。

<小松>
学校では、オートクチュール専攻で細かな手作業による作り方を学んでいたのですが、元々そうした作業を行うこと自体が好きでした。デニムは比較的簡単なつくりなのですが、ステッチが重要な表現なんですよね。なので、あえてステッチ表現が魅力的な1800年代のデニム要素を組み合わせました。最近では簡単な作り方で大量に売るファストファッションが注目を集めていますが、私たちのブランドでは、デニムをメインにしながら、ステッチワークを効かせたデザインで、自分たちだからこそできるモノづくりをしようと決めました。

——今回のコラボプロジェクトでは、すでに知名度のあるブランドよりも、勢いのある特徴的なブランドと共創することによって、Z世代を中心とした層に響く、あるいは彼らが発信したくなる取り組みを実現できるのではないかと考えました。

実際にコラボするにあたって島尻さんから最初にいただいた言葉が印象的でした。

<島尻>
ボロボロのバイクにデニムを引き裂いて絡ませたい(笑)。
まず自分の中に、放置されたバイクのイメージがあって、そこに植物を絡ませることができれば可愛いんじゃないかなと思いました(笑)。交流のあるフラワーアーティストの方がいたので、その方のアート作品としてのセンスを加えつつ、一つのものを作ってみたいと思いました。

<小松>
私のイメージとしては、バイク自体には色を持たせないほうがいいなと感じていました。色をもたないバイクやデニムに対して、お花との組み合わせであれば、無機質なプロダクトに生物が寄り添うように見えて、ちょっとした違和感を見る人に感じてもらえるかなと考えました。

——我々の会話の中では、可愛いか可愛くないかで割と決めていきましたよね(笑)、その判断基準も新鮮で、とてもいいなと思いました。バイクとファッションの尖っているモノ同士が、その対局にあるような可愛いという基準で判断したことで、最終的に面白いものができたのではないかなと感じています。

今回の大きなテーマとして愛着を一つのテーマとしています。デニムもバイクも使い込むほどに変化し、愛着を持つものとなる
共通点からこのテーマに行き着き、錆びたカスタムバイクを作成しつつ、そのバイクにデニムが絡んでいく表現にしました。実際にプロジェクトを行うにあたってはいかがでしたか。

<島尻>
最初はちょっと大変でした(笑)。 どうすればカッコ良くなるのか、何が正解なのかが分からなくて、6時間ぐらい作業して、ただバイクに生地をかぶせただけになってしまって(笑)。松田さんや永井さんから色々なアドバイスをいただきながら少しずつ方向性が見えてきました。

——作り上げていく過程の中で、ヤマハ発動機さんに様々な協力をいただきながら、バイクとデニムと花が一体になって見えるような魅力的な表現にしました。デニムの色合いの調整など、島尻さん、小松さん、さらにはフラワーアーティストの森冬さんも含めてプロの仕事を見させていただきました。撮影は、モノが仕上がった後に行うことになりましたが、伝えたい対象であるZ世代に対しては、起承転結がはっきりした長いストーリー重視型よりも、場面の移り変わりで視覚的に飽きさせない短いムードモンタージュ型の映像になることを目指しました。撮影場所は小松さんと関係のある場所でしたね。

<小松>
はい。私の地元、長野県の知り合いに撮影の協力をいただきました。

——様々な関係者に協力をいただき、結果としてHOUYHNHNM、装苑、mdnt.(ミッドナイト)といった関連メディア等にも取り上げていただきました。今回大変だったこと、楽しかったことなどはあったでしょうか。

<島尻>
大変だったという点では、大きな企業とのコラボレーションだったため、当然ですが様々な制約があったり、急遽変更する必要が生じたりということが大変でした。一方で、永井さんや松田さんがとても楽しくて(笑)。和気あいあいとした雰囲気で取り組めたことが楽しかったです。

GKさんはすごいプロダクトをデザインしていますし、そうした会社と一緒に取り組めたことは貴重な経験になりました。二度と叶わないような経験をさせていただき、ありがたく思っています。

<<会場から>>
デニムを持ってきていただいているので、こだわりの部分を紹介いただけないでしょうか。

——バイク乗車時にも配慮された工夫が至るところに施されていて、普通のジャケットだと伸びない部分にも、プリーツを設けることでライディングポジションになった際にもスムーズに伸びます。パタンナーさんが通常は行わない複雑な作りになっていますよね。

<小松>
そうですね。デニム生地だと硬いので、可動域を制限しないよう乗車した時にスムーズに操作できるデザインにしているのがこだわりのポイントです。また、グローブをしていると、通常のポケットだと中のモノを取りにくかったりするので、斜めの形にすることで使いやすさにも配慮しています。

<島尻>
パタンナーの友人が、安全服を販売している大手の会社で働いているのですが、アドバイスをもらいながら、安全的な側面とファッション性の両方を兼ね備えた服に仕上げました。

——今回一緒に携わった動画は、現在も再生数が伸びているようです。あらためて、モノ作りのプロの方と一緒に仕事ができたことが貴重な機会になったと感じています。今後も様々な形でトムワークスさんと一緒にお仕事ができたらと思っています。

本日はありがとうございました。

==================================

記事:井上弘介
写真撮影:川那部晋輔
全体サポート:竹田奏 / 加藤美咲