逆ハンを切るとはモーターサイクルの用語です。

例えば自転車やモーターサイクルでカーブを曲がるときに、曲がりたい方向とは逆方向に少しハンドルを切ってから曲がり始める動作のことです。一方で、普段仕事をしていると「田村さん、逆ハン切ってきましたね」と言われることがあります。

モーターサイクルのデザインを始めるときには、よく過去の名車を見に行きます。それは先人たちが創り上げた結果や、その定義を教えていただく大切な過程だと思っているからです。ただし、それをなぞっているうちは自分自身既視感を覚え、物足りなさを感じます。

クリエイションを進める中で、「過去とは違い、今はこういう気持ちなんじゃないか？」と思い始め、自分でも予想していなかったアイデアが出始めることがあります。それが自分の中で新しいコトを創り上げている瞬間なのかもしれないと感じます。そういうエモーションが、新しい定義へのチャレンジだと考えています。

ちなみに『逆ハン』のお話ですが、皆さんも普段からやっているのですが、気がついていない方がほとんどだそうです。私も外から見ると逆ハン切っているように見えるのかもしれませんが、自分としては普通にカーブを曲がっているつもりなんです。実は。

(プロダクト動態デザイン部　シニアディレクター　田村　純)