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2022.12.12

GK Base Salon

GK Base Salon Vol.6 2022/12

前回に引き続き、ユカイ工学代表青木俊介さんからお話を伺います。GK Base Salonを対面で観覧したメンバー、オンラインで参加したメンバーからの質疑応答を中心にお伝えします。

—— それでは、会場やオンラインで参加しているメンバーから質問があればお願いします。

【加藤氏】

「弱いロボット」という概念について興味があるのですが、もう少し教えてください。

【青木氏】

弱いロボットという言葉は、豊橋技術科学大学の岡田美智男教授が提唱された概念です。ロボットを万能に作るのは、技術的にもコスト的にも難しいけど、出来ないのであれば出来ないそぶりをしていれば人間が助けてくれるという考え方です(笑)。そうした方が人間とロボットが共存できる世界が早く作れるのではないかという考えです。

【加藤氏】

駅の案内ロボットのように、隙がなかったり人間がサポートすることがないロボットだとあまり関心が湧きませんが、ダメな子ほど助けたくなるという気持ちはとても共感できます(笑)。

【三富氏】

弱いロボットの例として、ゴミは見つけるけれど自分では拾わないゴミ箱ロボットがあります。拾わないけどゴミが落ちていることをアピールすることで、人間にゴミを拾いたくなるモチベーションを与えているロボットとも解釈できます。

【青木氏】

最初から自分で拾わずに、人間に拾わせようとするロボットです(笑)。

【福吉氏】

私はとてもぬいぐるみが好きで、今でも愛着を持っています。一緒に過ごしてきた体験や歴史がその理由だと思います。そうした愛着の観点でこだわりはありますか?

【青木氏】

このロボットには、BOCCO emoという名前を付けました。

エモいという感覚は瞬間的なものではなくて、時間の経過や人間関係、思い出などの蓄積があって、初めてエモく感じるんだと思います。開発のリーダーをやっていたエンジニアが、「エモいの反対語を見つけました。それは映えるです(笑)」。映えるって瞬間的なパッと見でしかない。映えるロボットはあるけどエモいロボットはないからそれを目指そうとBOCCO emoのプロジェクトに取り組みました。

【福吉氏】

もう一つ質問させてください。ユカイ工学のロボットって緩い感じを受けるのですが、めちゃめちゃかっこよくて好きなロボットってありますか?

【青木氏】

そうですね、かっこいいロボットだと。映画に登場するターミネーターの初期型が好きです。純粋にめちゃめちゃかっこいい。造形がかっこよくてスケルトンがいいですね。この映画を見てロボットを作ろうと思いましたが、なぜか今では全然違うタイプのロボットを作っています(笑)。実際にターミネーターを作る技術の見通しが立っていたら、ターミネーターを作っていたかも知れません(笑)。ターミネーターのようなロボットが好きですが、技術的制約はあるし、家庭にロボットがあって一緒に暮らしているような世界ってまだ実現できていませんが、近い将来絶対に実現すると思っています。その時にゲームで言うとファミリーコンピューターや、ゲームボーイのようなスタンダードを作るメーカーになりたいと思っています。

【安部氏】

家でハムスターを飼っているのですが、生きているハムスターには寿命があるのに対し、ロボットが寿命を終えるときには何か終わり方があるのでしょうか。

【青木氏】

Qooboやハムハムは、「寿命があります」とマニュアルに記しています。約2年ほどです。限られた命を楽しんでくださいとお伝えしています。実際のペットでも別れがあるように、所有者が同じような感覚になることも考えています。

【菅原氏】

先日BOCCO emoがPHASE FREE AWARDを受賞しましたが、開発当初からアワードのことは考えていたのでしょうか。

【青木氏】

考えていました。初段のBOCCOの段階から、もっとPHASE FREEの考え方を盛り込むことができたらということはありました。Wifi回線だけでなく、LTE回線でも繋がるようにすることで、たとえばWifi回線のない場所でも、防災無線の役割として使っていただくといった用途や、緊急時にはバッテリーをつなげば使えるといった用途を加えました。

【加藤氏】

防災時に、かわいいBOCCO emoがそばにいたら心の支えにもなりますね。

【三富氏】

普段使えているものが非常時にも使えるのはすごく良いと思いますし、シリアスな状況にこのBOCCO emoがいると落ち着きますね。

【菅原氏】

聞けば聞くほどロボットってなんだろうって感覚を持ちます。一言でロボットって広がりすぎていて、産業機械から小さなロボット、あるいはメタファーのようなものもロボットと位置付けられることがあります。そうした分類をしようという動きはあるのでしょうか。

【青木氏】

元々、ロボット学会に属しながらロボットハンドの研究を行なっていたような活動が歴史的にロボット研究の本流だと考えられています。最近は我々のプロダクトも受け入れられています。ソフトロボティクスという柔らかい素材で骨組みを作るという研究がなされています。ちょっとずつ柔軟になってきた感じですね。

—— それでは、最後に三富さんと青木さんから一言ずつお願いします。

【三富氏】

これからのプロダクトで大切なことに、モノに生命を感じさせて使う人の気持ちを盛り上げること、があると思います。そうしたプロダクトを、シンプルでミニマムにデザインしたいと考えました。本日はありがとうございました。

【青木氏】

あらためてロボットとモビリティの共通点は存在するなと感じました。私が乗っていたSRも、自分がキックスタートでかけると一発でエンジンがかかるけど、他の人だとなかなかかからない(笑)。そういった分かり合えている信頼感が、不思議とモビリティというプロダクトには感じます。人間が持っている何かがそうさせるのだろうと思いますし。私がロボットと同じように感じる部分です。今日は多くの気づきがありました。

貴重な機会をいただきありがとうございました。

終始和やかな雰囲気で青木さんからお話しを伺うことができました。お互いの共通点や考え方に対する切り口の違いなど、とても良い気づきを得ることができました。

武蔵野美術大学教養文化研究室の先生としても、美大生に教養科目としてロボット工学を教えられており、とても人気の講座だと評判です。今回のインタビューでも難しいことを分かりやすく伝えていただけたことがとても印象に残りました。貴重な機会をいただきありがとうございました。合同で妄想会やりましょう!

 

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インタビュー 記事:井上弘介

写真撮影:川那部晋輔

全体サポート:加藤美咲

 

  • 取材当日は、新型コロナウイルス感染防止対策を施した上で実施いたしました。