column 日々、思うこと separate

2020.08.12

コラム

あなたにとってクリエーションってなんですか?

皆様、コロナ禍いかがお過ごしでしょうか。
家にいることが多くなり、新しい生活リズムで自分の趣味の時間が増えた、なんて方もいらっしゃると思います。かくいう私も子供の頃から何かモノを作るのが大好きで、大人になってもその趣味は変わらず、DIYしたり、オートバイをカスタムしたりしています。
 
昨年までヨーロッパに駐在していたのですが、そこはモータースポーツ文化発祥の地でもあり、カロッツェリアなど、車やオートバイを専門に特別な車両を製作する職人達がたくさんいます。私もせっかくなので仕事とは別に楽しんでみようと、オートバイを購入しカスタムを始め、彼らにオートバイのパーツ造りを頼んでみました。そして、彼らの工房へ行くたびに、とても私では出来ない技術力や柔軟な発想力を見て、その背景の深さにも驚かされました。
 
パーツ製作を頼むと、ある程度形が出来てきたところで「一旦見に来い」と呼ばれます。行くとすかさず、「どうだ、気に入ったか?」なんてニヤニヤしながら聞いてきます。そこで、こんな感じになってるともっといいな、なんて絵に描いたりすると、彼らの顔が急に真剣になり、「お前モノを作るの好きそうだし、ざっくり自分で考えてみな、後で俺がちゃんとしたものに創ってやるから」なんて言って場所と道具を貸してくれ、結構な時間彼らの工房に入り浸って共同作業させてもらいました。
 
私が出会った職人達はそういった共同作業を楽しむ方々ばかりで、こちらからアイデアを投げかけるとそれを上回ることをやってのけてくれたのでした。そして気が付くと、自分のバイクは当初思い描いていたものとは変わっていました。
 
今あらためて一つ一つのパーツを見るたびに、そのパーツを創った一人一人の職人達の顔を思い浮かべる、私のヨーロッパ思い出アルバムになっています。
 
日本に帰り、それを眺めながらふと思い出したのです。普段私が仕事にしているデザインとは、他の人との共同作業でやっと形になる仕事で、製品はその共同作業の塊なんだと。実際に製品を見ても造り手一人一人の顔は見えませんが、その「モノ」には、デザイナーや企画者、エンジニアや広報担当者、そして工場で組み立ててくれる人など、様々な人達との共同作業で創り上げたクリエーションがぎっしり詰まっているのです。
 
そう、彼らヨーロッパの職人たちに「そういう事がクリエーションの楽しさなんだよ」と教えられたなぁと、このバイクに乗るたびにそう思うのです。
 
( プロダクト動態デザイン部 シニアディレクター 田村 純 )