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2021.07.29

コラム

なぜデザイナーはプログラミングを勉強するのか

最近製品デザインの領域でもパラメトリックデザインがよく使われている。一方で、プログラミングできるデザイナーは少なくない。なぜデザイナーはプログラムを勉強するのか。デザイナーはスケッチだけに集中して、プログラミングはプログラマーに任せればいいじゃないか、このような疑問もあるでしょう。プロのプログラマーになるつもりがないが、私は四つの理由でプログラミングを勉強している。

 

一つ目:絵を描けないモノを作る

デザイナーは3次元で想像して、2次元の絵で表現する。3次元で想像しにくい際、実物のモデルを作ったり、あるいはデジタルモデリングを行ってみる。そうすることで、想像しにくい形も見えてくるでしょう。しかしこのプロセスでは、頭で想像できるものしか具体化できない。想像力を超える造形はそもそも絵で描けないし、モデル化するのも難しい。自分の想像力を超えるモノを求める際に、プログラミングは一つの解決手法と考えている。

 

二つ目:偶然出会う

スケッチする時に、いかに自分の頭を柔らかくして、自分が思いつかないことを得るために様々な工夫している。例えば、慣れている鉛筆からあえて書道筆を使うとか、利き手ではない方の手で絵を描くとか、ティッシュの上で絵を描くデザイナーもいるでしょう。これらの方法を使うことで、偶然出会う事による、新しいデザインを生み出す。プログラミングを使ったデザインは偶然出会うために、役立つ手法であると思う。造形の各要素をパラメター化して、各要素の変数を組み合わせ、自分が思いつかない結果からデザインのヒントを得る。

 

三つ目:効率を上げる

自分のデザインプロセスを一つ一つ分析して、一つのタスクフローを作る(プロシージャ)ことで、作業効率を上げる。例えば弊社でデザインした真田義足の裏側にあるハニカムパタンは一つの事例です。パタンの大きさと深さは義足の剛性に左右しており、剛性をチューニングする際に、パタンの大きさと深さを調整し、解析し、その結果を見て、更にパタンを調整・解析する、繰り返し作業が発生する、この時パタンの深さと大きさをパラメター化することで、作業効率を上げることができる。

四つ目:幅広い提案を生み出す。

ここまでの三つのプロセスを繰り返し、コンピュータの手助けや偶然の結果を見ることで、自分の中に新たな引き出しを作ることが出来る。そのため、このプロセスを繰り返すほどにより幅広く、魅力的な提案を生み出せるようになる。コンピュータによる可能性を自分の中に取り込むためにもプログラムをする必要があるのです。

 

上記の理由で、私はプログラミングを勉強している。気を付けたいのは、プログラミングは用いるものの、無意識にコンピューターからランダムで生成した形のままではデザインではないという事。良いモノを見極める判断力はデザイナーであるべきと考えている。

 

( デジタルエクスペリエンスデザイン部 ユニットリーダー 江致霖 )