![]() |
講演![]() |
風のデザイン 伊坂 正人 インダストリアルデザイン/静岡文化芸術大学教授・日本デザイン機構専務理事 ![]() 今日は、この静けさのデザインということを、風ということをキーワードに少しお話をしてみたいと思っています。題して「風のデザイン」。その前に、前半の基調講演の中にこの静けさというテーマがなぜ出てきたかという話はすでに出てきましたが、ここで「今なぜ静けさか」というのをちょっと定義づけてみたいと思います。 ![]() ![]() ![]() 住宅地の中にこういう生垣というのを見受ける地域があります。これは風の強い地域、こういう植栽を家の周りに施して風を防いで来た。これが一つの住宅地の風景、景観を形成してきている。最近はこういう風景も、この生垣を維持するのが難しくなって、だんだん消えていってるっていうのがちょっと悲しい状況ですけども。また、風は海岸線、砂浜にこういうような風紋と呼ばれる造形物を作り出しています。日本の中に、こういう風紋が作られている観光地というのが随所に見受ける事ができるわけです。 さらに風で遊ぶ文化、これも日本の各地に凧揚げという文化があります。これ、後で紹介しますけれども、浜松という都市で行われている凧祭の風景で、畳一畳ぐらいの凧を揚げて闘わせるという壮大なお祭りです。 ![]() ![]() ![]() 私は、ここから新幹線で二時間程離れた浜松という都市の大学で教えておりますが、そこは、この地図でいうと名古屋に近い地域で、先程の風の状態を示す地図でいうと青い風が吹く、青い風が吹くというのは風速四メートル位、もう少しシビアに言うと三メートル前後の風が吹いている地域ですけれども、吹く季節というのが冬です。冬場の乾いた風、日本語ではからっ風というんですが、乾いた風というのは体感温度を低める、厳しさをより増す風になっているわけです。そういう風が吹く地域に、先程の凧揚げの文化ですとか、生垣の文化といったようなものがあったわけですけれども、ここに注目しまして、大学の教員の仲間、学生、それから地域のベンチャー企業、市民たちと風プロジェクトというものを起こして検討しております。これは、浜松というドライな風が吹く地域のアイデンティティというものを、プロダクトと、それからメディア、さらには空間、そして文化という側面でデザインのアイデンティティとして検討出来ないだろうか?ということです。では、実際にやっておりますその一部を少し紹介したいと思います。 これはその中の小さな風力発電器を使ったデザインです。そこで使っておりますものは直径二十センチの風力発電機です。これで何ができるかっていうと、三ボルト位の発電なんですね。三ボルトの発電っていうと、今電池でいえば指先に載る位の電池があるわけで、この微弱な電気を起こすのに、この直径二十センチのプロペラを持った発電機といえども、ちょっと大袈裟かもしれませんけども、こういうものを使って弱い風を受けて弱い電気を起こすと何ができるんだろうかという事を、先程言ったようなチームの中で考えております。 いくつかのプロダクトの展開というのが考えられました。生活に身近な風力発電機器ということで、これは仲間の教員が作ったものです。先ほど言った、弱い風を受けて光る照明器具。風の強さに応じて光の輝きというのが変化するという、一つの自然を光としても感じ取ることのできる発電機を使った照明器具です。さらにそういうものを展開することで、街路灯といったようなものも考えました。これは同じ仲間の教員が作ったもので、実際に屋外に置くことで、一つの街路灯として機能できるものです。 これは先程言った二十センチ、直径二十センチのプロペラよりも一回り大きい直径三十センチのプロペラを使ったものですけれども、街路灯として機能できるものができるわけです。こういう風、先程例に出しました風鈴というのは、目に見えない風を一つの形にして音にするというようなものです。風をビジュアルに置き換えることができる。 ![]() こういうような、ほんのわずかな風といったようなものに着目するデザイン。まあ風自身、自然の脅威として、まさにノイジーな風もあれば、こういう静かな風の領域もある。こういう静かな風の領域というものをデザインを通し、道具作りを通して、自然に対峙する人間といったようなものを見つめ直す。こういう方向の中に一つ静けさのデザインっていう生き方もあるんではないかと考えます。私どものプロジェクトは、まだ継続的に進めておりますけれども、一つの結果が出ましたので、今回のシンポジウムに合わせてお話しさせていただきました。 どうもありがとうございました。 ![]() |
事務局 日本フィンランドデザイン協会 (Japan) 東京都港区南麻布3丁目5-39 フィンランドセンター内 連絡先 : 株式会社 GKグラフィックス内 telephone:03-5952-6831 facsimile:03-5952-6832 e-mail:jfda@gk-design.co.jp 戻る |