column 日々、思うこと separate

2020.11.11

コラム

その正体とは

 私は仕事をする上で大切にしていることがある。それは「びっくり」と「なっとく」だ。
 まず第一に、一緒に仕事をする人たちやデザインした商品を使うユーザーに驚きを与えたいと思い、取り組んでいる。それが「びっくり」である。
それは相手の期待値をさらに超える、という相手の予想と同じベクトル上の話でもあるし、時には裏切ること、つまりは全く逆方向にベクトルを向けることでもある。
個人的には後者を好むので、自分は天邪鬼なのかもしれない。
 
 次は「なっとく」だ。ただ相手を驚かしただけだと、それはただのびっくり箱に過ぎない。
その驚きの裏に隠された意図や真意を、相手が納得し共感してもらわなければならないし、デザイナーにはその責任がある。
それは「なるほど!だからそうなのか」を引き出すための手品の種明かしに近い感覚かもしれない。
このように「びっくり」と「なっとく」つまりは「驚き」と「共感」を、仕事をする上で大切にしてきた。
 
 そんな中ふと最近、次のようなフレーズを目にした。
『面白いとは”差異”と”共感”の両輪である』
それは佐々木健一さんという元TV番組制作者の方の言葉だった。
まさに自分が意識してきた二つの言葉が並んでいるではないか、と勝手ながらシンパシーを感じた。
(差異と驚きは言葉こそ違うが同義と捉える。)
そう言われてみれば、お笑いもその公式に当てはまる。
こちらの予想しない行動を起こす”ボケ”はすなわち「差異」であり、それは違うだろと正しい方向へ修正する”ツッコミ”は「共感」なのである。どうりでお笑いというものは「面白い」わけである。
 
 とあるYoutuberもそうかもしれない。もちろん、バカバカしいことをしているだけと一蹴する見方もできる。
しかし、それを予想を超える規模で行えば「差異」であり、視聴者の”実は自分もやってみたい。”という隠れた願望や憧れを認識させれば、それは「面白い」ものとして成立するのである。
なるほど、冒頭に記した私の大切にしていることの正体は、どうやら「面白い」の素だったようである。
「面白いデザイン」と言葉にするとどうも誤解を招きそうな気もするが、そんなことは気にせず、面白い至上主義でデザイン道を精進していきたいと思う。
 
(CMFG動態デザイン部 ユニットリーダー 永井 智)