column 日々、思うこと separate

2020.06.19

扉絵

2020年6月の扉絵

 

「オートバイのデザインって、どこをデザインしてるんですか?」
 
今月の扉絵は、使い込まれたエンジンをイメージして描いてみました。もちろん、真っ新の新車で自分のところへ来た喜びも嬉しいものですが、私は日々動かし、長年に渡って使い込まれた機械の匂いがするオートバイも好きです。
 
表題の質問は、こんな仕事をしているとよく聞かれる事です。車の様な全てがボディだと、一般の方には分かりやすいのでしょう。エンジンやメカが丸出しのオートバイは、分かりやすいボディパーツが多くはありません。ですがオートバイでは見えるほぼ全ての部分をデザインしていると言えます。
 
スケッチはMT-01のエンジンですが、元々はXV1600ロードスターのエンジンがベースとなっています。車もオートバイも開発費が大きいパーツは共用する事が多く、エンジンはその最たるものです。しかしXV1600の時は、仕様や構成、ほぼ全てが0からスタートしました。目に見えるフィンのピッチや厚さはもちろんの事、ヘッド形状やパイプの配管、くびれのある力強いシルエットまでもデザインが入れられています。このエンジンは後に、ウォリアー、MT-01、ロードライナー、レイダー等に搭載されています。
 
エンジンに限らず、ハンドルの曲げやあらゆるステー形状や各部品は、機能性と美しさを併せ持つべくデザイナーと設計者が作っています。特にこういったコンポーネントパーツは、ボディと違ってお客さんが変えにくい部分です。それを知っているからこそデザイナーも設計者も手を抜けません。
 
もし街中でオートバイを見る機会があれば、ボディ以外の部分も見てみて下さい。きっとデザイナーや設計者の意図が見えて来るでしょう。
 
( マスターデザイナー 飯村 武志 )