column 日々、思うこと separate

2021.12.02

コラム

デザインの初心

最近、息子が壊れてしまった腕時計を新しいのに買い替えると言って勉強そっちのけで情報収集をしています。私の気質を引き継いでいるのでモノへのこだわりはすこぶる強いのです。

欲しい性能を列挙してそれらを満たしたうえで自分が気に入ったデザインのものを探そうとしているのですが、機能は満たしているけどデザインがいまいちであったり、カッコは良いけど機能が足りないと苦戦しています。複数の時計を使い分けるわけではないし、予算も限られているので、これがベストと言える製品を血眼になって探しているようです。そのうえで言った言葉が「欲しいと思ったいいデザインのものは何故か高いんだよね」。

これにはびっくりしました。これこそまさに私がデザイナーを志した理由だったからです。
「工夫をすれば、もっといいデザインのものを低価格でも提供できる。そうすれば多くの人が、かっこいい暮らしができるはず。」それが私の初心でした。

GKでは、それを「美の民主化」と言ってずっと活動してきたというのは入社するまで知りませんでした。今でもGKで働き続けているのは根っこの部分がフィットしたからかもしれません。

今となっては、良いものはそれなりの素材、工法、仕上げで使っている為にコストがかかる事も知っていますし、戦略的に差を作っていることも知っています。
 しかし、デザイナーの質でモノのレベルが変わってくるのは確かなのです。今小型車のインテリアデザインでの日本車と欧州車のレベルの差は相当開いてしまっています。デザイナーの和田智氏も仰っていましたが、型物でモノをつくるのはどこも同じなので、差を作っているのはデザイナーのセンスとこだわりなのです。(もちろんGOを出すディレクションも大きな要因ですが、そこは次回にしたいと思います。)

今日本のデザイン界では、関心がモノを離れコトに、さらに世界観へと変わってきています。その間に、日本のモノは競争力を失ってきているのも確かです。
 社会の変化の中で、私たちも変化してきています。大きなデザインを志向しつつも、ちゃんと人の琴線に触れる“モノ”を生み出せなきゃいけない。納得のいく“モノ”を次の世代に届けないといけない。初心を思い出させてくれる出来事でした。

( プロダクト動態デザイン部 執行役員 太田 裕之 )