column 日々、思うこと separate

2021.08.27

コラム

宇宙旅行の境界

今年の夏もコロナ禍のニュースが多く流れているが、宇宙開発の側面からもポイントとなるようなニュースがあった。民間宇宙旅行成功のニュースである。短い時間ではあるが、民間人が宇宙空間に旅行ができる、私が子供のころに描かれていた一つの未来が実現されている。私なりに大きなニュースだった。

ただニュースを見つつ疑問に思った。どこまで行けば宇宙なのだろう。以前から国際宇宙連盟は高度100kmを航空学者の名前を取り、カーマン・ラインとして境界を定義している。しかし、実はその他の団体では異なる定義を示している。アメリカ軍は92km付近、連邦航空局では80kmと設定している。

確認してみると、ベソス氏が登場した地上垂直発射型のロケット、ブルーオリジンは、100kmを超えて成功と発表しているが、上空で航空機から切り離し式のヴァージンキャデラックの宇宙船ユニティーは、80kmを超えて成功と発表している。ともに形状から来る様式に対し、近い団体の境界定義を基準にしていることが推測される。100kmであっても80kmであっても外を映した映像は十分宇宙空間であり、またその距離に大差は無いが、民間宇宙開発にも目にする形状や様式には、背景にある様々な定義が存在することが面白いと思った。

これは私の思いではあるが、宇宙空間に対峙するところに地球圏内があるとするならば、重力から一定の離脱をもって境界ではないかと思うところがある。今の所、衛星軌道が成立する最低高度が130kmから150kmと記述されている資料もあるので、そのあたりを境界としたほうがいいのではないかと思うことがある。

しかし、旅行と位置付ける場合、例えると海に遊びに行った時にめったに外洋までは行くことはない。渚を楽しむことで十分楽しい。現時点ではそういう位置なのかと理解しなおすところもある。

おそらくは今後も多くの民間宇宙旅行が行われると思われる。形状や様式、そこからの定義、そして何を超えてゆくのか、新たなニュースを楽しみにしたい。

( デジタル戦略部 ユニットリーダー 梅本武志 )